アサナの実践は身体全体に有益な影響をもたらします。なぜならアサナは筋肉、組織、人体、関節、神経を調整するだけでなく、身体のすべての系統の円滑な機能と健康を維持するからです。
アサナは身体と心をリラックスさせ、疲労や虚弱、また日常生活のストレスの回復を可能にします。
アサナはまた、新陳代謝、リンパ液の循環、ホルモン分泌を促進し、身体の科学的バランスを徐々に整えていくことができます。
完成ポーズで完全に心地よくいられるようになるまで、とにかく練習し続けることが大切だとグルジはおっしゃいます。
緊張状態の継続が心の病や体調不良につながることを私たちはすでに知っています。私たちがどの時代に生きていたとしても精神的苦痛は存在してきました。自我、無知、欲望、他人への嫌悪、愛着が原因だと、十数世紀前に聖者パタンジャリは結論付けています。
ストレスに悩む方は、YOGAのストレスに対する考え方、対処について以下にまとめましたので御一読ください。
ヨガとストレス
ストレスの原因
みなさんは気づいているでしょうか。便利な時代になってきた一方で失ってきたものがあることを。
成功は人の心を傲慢にし、心を見失わせています。それは競争心や妬みの感情が広がる引き金となっています。財政難、感情の起伏の激しさ、環境汚染、そして何より、忙しい出来事に飲み込まれていく感覚が、日常の生活のストレスを増幅させています。
そうした要因は身体だけでなく神経的緊張を引き起こし、心にも悪影響を与えます。そんなときに人は孤独感や寂しさに襲われるとグルジはおっしゃいました。
これに対処しようと、私たちは、日常で不自然な解決方法に走ります。
自暴自棄で慰めを求める人たちがすることは、薬物乱用、過剰な摂食、非建設的な人間関係などです。これらは結局不幸の根本原因であるストレスを未解決のまま保留にしてしまいます。
グルジは、ヨガが全てのストレスから解放させることのできる奇跡の治療法ではないと言及しておられますがそれらストレスを最小限にする手助けはできる、とおっしゃいました。
現代生活のストレスは私たちの生命エネルギーの蓄えを消耗させます。それは神経細胞という貯蔵庫から生命力を引き出してしまうからです。やがて枯渇したエネルギー貯蔵庫は精神と身体の均衡を崩しかねません。
YOGAでは神経が無意識をコントロールすると考えられており、神経系が強いと人は困難な状況により前向きに立ち向かえると考えます。アサナは体中の細胞への血流を改善し、神経細胞に新たな活力を与えます。この流れこそが神経系を強化し、耐ストレスを高めると考えられています。
みなさんは横隔膜という運動器官をご存知でしょうか?YOGAでは横隔膜は心の知性の”座”で、かつ魂への”窓”となると言われています。横隔膜はストレスフルな状況下では張りつめられてしまい、呼吸に合わせてその形を変えることができなくなります。YOGAでポーズをすることは横隔膜の弾力性を高めるため、この問題にも対処しています。言い換えれば、横隔膜が伸長しているとき、知的、感情的、身体的、いずれのどんな量のストレスにも対応できるようになります。
無理のない呼吸で体中の細胞に静謐をもたらし、顔の筋をリラックスさせ、知覚器官(目、耳、鼻、舌、皮膚)の緊張を取り除くことができる方法、それがアサナです。
アサナとプラナーヤーマの実践は、身体、呼吸、心、知性の統合を促進します。
この状態が起きると、運動器官と絶え間なくやり取りをしている脳が”空”の状態となり、すべての思考を静止させることができます。すると恐怖や不安は脳に侵入することができなくなります。
この能力を開発することで日常生活を効果的に、かつ無駄なく、行えるようになるとグルジはおっしゃいます。
それはすなわち貴重な生命エネルギーを浪費せずにすむということ、心はストレスから解放され、平静さと、落ち着きに溢れるとはっきりと言及しておられます。
「The path to holistic health /the definitive step-by-step guide」(2015.12.25 B・K・S Iyengar)